幼き日、パパの肩の上から見えた田園風景。
遠くに見える火葬場の煙が静かに空を舞っていた。
【どうしても会いたい人がこの世にいる】
義理の父である。
文字通り自分の妻の父に値する人だ。
そんな義理父は、会う前からいろんな噂を聞いていた。
180㎝を超す長身で、
喧嘩になれば一発で必ず相手を仕留める武闘派で無類の漢。
東京の(悪)の激戦区(赤羽)~(足立区)辺りの
不良で知らないものはいないと言われていた暴れん坊。
職業も謎であった。
不動産関係から金融、ブローカー会社の社長とか言われていたが、
真実を知るものは殆どいない。
いずれにしろ、波乱な人生を生きてる人ほど、都市伝説が生まれる。
弱気に優しく、強気に厳しい、
部下すべての面倒を見て
無償で酒と料理を振る舞う昭和の漢。
いつか会いたいと思っていた。
会わなきゃいけないと思っていた。
最初は殴られると思っていた。
当然だ、挨拶もせずに、自分の娘と結婚したのだから・・・・
埼玉県某所
義理父に会う為に
都内から一時間程、車を飛ばす。
東北道のICから車を降りると
別世界の様な田園風景が広がる。
妻はこの地に26年ぶりに足を踏み入れた。
あまり変わらない風景が幼少時代にフラッシュバッグしたかの様に・・・・
涙交じりの瞳で静かに外を眺めている。
26年前、妻はまだ赤ん坊であった弟と、
母の手に引かれこの街を出た。
その日を境にこの街に、そして父に会う事はなかった。
大きな体で肩車をして遊んでくれたパパ・・・・
遊園地に連れていってくれたパパ・・・・・
ブランコで遊んでくれたパパ・・・・・
楽しい日々が、その日を境に悲しい想い出に変わった。
それから26年の間、義理父がどこで、
何をしていたかも知る人はいなかったと言う。
そこからは義理母は女手一つで二人の子供を育てた。
昼は保険のセールス、夜は水商売をしながら働く義理母。
中学生に上がる頃には、妻は自分で母と弟を守るしかないと思ったという。
遊びたい盛りの10代半ばから、モデルなどの仕事をして
金を稼いでいた。
グレる時間も、遊ぶ余裕もなかった。
時に自分達を見捨てた義理父を恨みかけても、
世界でたったひとりの父親に会いたいという気持ちしかなかった。
いつかパパに会える。いつも妻は俺にそう言っていた。
そんな義理父から突然連絡が来たのは令和に入ってすぐの
今月の事。
田園風景から少し県道に入った建物に車を止める。
26年ぶりに、会う父がここにいる。
初めて会う、義理父がここにいる。
二人は少し緊張して扉を開ける。
義理父に初めての挨拶をする。
自分の挨拶に無反応だ。
26年ぶりに会う実娘にも無反応だ。
目は閉じたままであった。
久々の再会に少し照れていただけなのか・・・・
長身でカッコよかったパパ。
好きな映画スターそっくりで、
ロックスターのチャーと似ていて・・・・
26年の月日は長すぎる。
白髪交じりの髪。豆が出来た働く男の手。
冷たく硬い父の手を握り妻は泣き崩れる。
去年の暮れに仕事を失った義理父は、
朝から酒浸りの生活になってしまったという。
花嫁衣裳で写る妻と弟と義理母の写真
一枚の写真を見た義理父は涙を流しながら息を引き取った。
肝臓も病んでいたし、恐らく義理父は自分の死を悟っていたと思える。
26年ぶりの娘との再会はあまりにも悲し過ぎる結末であった。
俺とは一度も話す事はなく、風になった。
生きるという事は映画より小説より
ずっと悲しく切ないものだ。
26年ぶりに、この街を去る妻。
(私、大きくなったらパパと結婚する)
幼き日、パパの肩の上から見えた田園風景。
近くに見える火葬場の煙が静かに空を舞う。
義理父はそこで風になった。
遠くに見える火葬場の煙が静かに空を舞っていた。
【どうしても会いたい人がこの世にいる】
義理の父である。
文字通り自分の妻の父に値する人だ。
そんな義理父は、会う前からいろんな噂を聞いていた。
180㎝を超す長身で、
喧嘩になれば一発で必ず相手を仕留める武闘派で無類の漢。
東京の(悪)の激戦区(赤羽)~(足立区)辺りの
不良で知らないものはいないと言われていた暴れん坊。
職業も謎であった。
不動産関係から金融、ブローカー会社の社長とか言われていたが、
真実を知るものは殆どいない。
いずれにしろ、波乱な人生を生きてる人ほど、都市伝説が生まれる。
弱気に優しく、強気に厳しい、
部下すべての面倒を見て
無償で酒と料理を振る舞う昭和の漢。
いつか会いたいと思っていた。
会わなきゃいけないと思っていた。
最初は殴られると思っていた。
当然だ、挨拶もせずに、自分の娘と結婚したのだから・・・・
埼玉県某所
義理父に会う為に
都内から一時間程、車を飛ばす。
東北道のICから車を降りると
別世界の様な田園風景が広がる。
妻はこの地に26年ぶりに足を踏み入れた。
あまり変わらない風景が幼少時代にフラッシュバッグしたかの様に・・・・
涙交じりの瞳で静かに外を眺めている。
26年前、妻はまだ赤ん坊であった弟と、
母の手に引かれこの街を出た。
その日を境にこの街に、そして父に会う事はなかった。
大きな体で肩車をして遊んでくれたパパ・・・・
遊園地に連れていってくれたパパ・・・・・
ブランコで遊んでくれたパパ・・・・・
楽しい日々が、その日を境に悲しい想い出に変わった。
それから26年の間、義理父がどこで、
何をしていたかも知る人はいなかったと言う。
そこからは義理母は女手一つで二人の子供を育てた。
昼は保険のセールス、夜は水商売をしながら働く義理母。
中学生に上がる頃には、妻は自分で母と弟を守るしかないと思ったという。
遊びたい盛りの10代半ばから、モデルなどの仕事をして
金を稼いでいた。
グレる時間も、遊ぶ余裕もなかった。
時に自分達を見捨てた義理父を恨みかけても、
世界でたったひとりの父親に会いたいという気持ちしかなかった。
いつかパパに会える。いつも妻は俺にそう言っていた。
そんな義理父から突然連絡が来たのは令和に入ってすぐの
今月の事。
田園風景から少し県道に入った建物に車を止める。
26年ぶりに、会う父がここにいる。
初めて会う、義理父がここにいる。
二人は少し緊張して扉を開ける。
義理父に初めての挨拶をする。
自分の挨拶に無反応だ。
26年ぶりに会う実娘にも無反応だ。
目は閉じたままであった。
久々の再会に少し照れていただけなのか・・・・
長身でカッコよかったパパ。
好きな映画スターそっくりで、
ロックスターのチャーと似ていて・・・・
26年の月日は長すぎる。
白髪交じりの髪。豆が出来た働く男の手。
冷たく硬い父の手を握り妻は泣き崩れる。
去年の暮れに仕事を失った義理父は、
朝から酒浸りの生活になってしまったという。
花嫁衣裳で写る妻と弟と義理母の写真
一枚の写真を見た義理父は涙を流しながら息を引き取った。
肝臓も病んでいたし、恐らく義理父は自分の死を悟っていたと思える。
26年ぶりの娘との再会はあまりにも悲し過ぎる結末であった。
俺とは一度も話す事はなく、風になった。
生きるという事は映画より小説より
ずっと悲しく切ないものだ。
26年ぶりに、この街を去る妻。
二度目のパパとのお別れを言いながら。
(私、大きくなったらパパと結婚する)
幼き日、パパの肩の上から見えた田園風景。
近くに見える火葬場の煙が静かに空を舞う。
義理父はそこで風になった。
今日のナンバー、幼き日に義理父と妻が良く踊ったという曲で
ランバダ
お義父さん。
今回も会う事は出来なかったけど
いつか必ず一緒にお酒を飲みましょう。
その時は殴られないような人生を過ごします。
妻の事は俺に任せてください!
だから安心してお休みください。